コマクサ平より赤岳を望む
ハイマツと岩に覆われた道を数十メートル程周囲に蝶が居ないか目を凝らしながら歩くが居らず「まさか発生していない?」と嫌な予感に包まれながら更に歩くと開けた場所に出た。
岩と低木、所々にコマクサ、少し奥に行くとハイマツに包まれた平地・・・黄色い蝶が横を飛んでいく!しかも黄色い翅には鮮血紋がポツポツと!カァ~っと体中の血が沸きあがる「バキ!バキだ!!」
つい他の人が居るのに叫んでしまった。先客は当たり前の様に「結構飛んでいますよ」と言う感じで余裕綽々、こうしちゃ居られない撮影せねば!しかし結構日が当る時間なのかバキは止まってくれない。しかもウスバシロチョウの様な人里で穏やかに飛んでいるモノではなく、野性味溢れる恐ろしく俊敏で攻撃的な飛び方なのだ。ロシアに採集に行った人の話で飛ぶのが早いと聞いたが百聞は一見にしかず、氷河期に取り残され大雪で今日まで生き残ってきた蝶なのだ、人里の緩い環境で穏やかに飛んでいるウスバとは違うのだ。
「ダイタカが居ると」との声に寄っていくとどうも様子がおかしい・・・ダイタカは羽化不全でアリたちが襲い掛かっている。
ダイタカ「写真なんか撮ってないで助けろや」
パタパタと動いてはいるもののもう虫の息・・・合掌。自然は厳しい、ちょっとの失敗で命を落としてしまうのだ。
狙いが定まらず、やきもきしていると小型の蝶が足元を素早く飛んでいく・・・アレはもしや!目で追うと止まった。ファインダーを覗くと!アサヒヒョウモン(旭豹紋 Clossiana freija)「アサヒヒョウモンだ!」
実物はこんなに小さく可憐な蝶なのか。ちょこまかちょこまか地面ギリギリを飛んで、いたずらな小娘に遊ばれているような感覚で追いかけっこ。コマクサ平は雪も無く気温が高いのだが、他の場所には雪が残っているせいかやや冷たい風時折吹く。そういった瞬間が撮影チャンスで、風に押され不時着する姿が見られた。
ガンコウラン(アサヒヒョウモン・カラルリ食草)に不時着。小柄で可愛らしい蝶で自分がその日に確認した大雪の高山蝶では一番数が多かったのでは?と思っている。
更に産卵する個体までシャッターを切る事に成功。ニンマリデス!
クロマメノキ(食樹)で一休み。横からの姿を捉えた。
アサヒヒョウモンの撮影はお腹一杯になったが、バキ・ダイタカはまだ撮影できていない・・・友人と再会するともうバキ・先程のダイタカを含めれば3種の撮影に成功しているらしい。グヌヌ・・・
焦りが募ると碌な事が無い。ピントが上手く合わせられ無かったり、いい場所に止まらない、止まったと呼んでくれたので行きファインダーを覗いていると、後から「何か居たの~」と鈴を鳴らしながら来たオッサンの気配で驚き飛んで撮影できない・・・
バキは悠々と敏捷に柵の奥のほうを飛ぶ・・・・
遠目ながらもあの鮮血紋は鮮明に目に残っている
そしてもう時間も14時半過ぎになり風も冷たくバキも飛ばなくなってきた。もうアカンなぁ・・・と諦めのため息を漏らしていると友人が何かを撮っている。そろ~り、そろ~り近付くと・・・
ウスバキチョウ(薄羽黄蝶 Parnassius eversmanni) コケモモで吸蜜
赤い鮮血紋は残念ながら隠れてしまったが今日一番のショットだ!数枚シャッターを切ったと思ったら「もういいかい?」と風に乗って颯爽とハイマツの向こうへ消えてしまった。後ろ髪引かれる思いだがそろそろ時間と帰る準備をしていると、ダイタカが居るらしく撮影をしているらしいがファインダーを覗いても良く分からない。何度か言われて必死に探すと・・・・
ダイセツタカネヒカゲ(大雪高嶺日陰 Oeneis melissa)
「居た~!(心の中で)」
これは素晴らしい保護色!何度も見直してやっと見つけることが出来た!大雪のハイマツ仙人が目の前に居る!
興奮もそこそこにもうタイムアップ!昨年少し無茶をして購入したZD300mmF4だったが、柵が有り、蝶との距離がある難しい状況のなか大活躍であった。
コマクサ(ウスバキチョウの食草)とガンコウラン(アサヒヒョウモン・カラルリの食草)コマクサはまだ咲いていない株が多かった。
さらばコマクサ平!さらば高山蝶達!また会おう!
あ、そう言えば帰りはあの怖い雪渓を下るのかw
・
・
・
降りた頃には足がプルプル笑っておりましたw
バキ撮れないでぶ~たれていた自分に付き合ってくれた友人に感謝です。